2013年12月10日

任期付き助教の転職〜博士課程卒の就職とポスドクの転職

久々に投稿します。

さて、僕が任期付き助教時代に民間企業への転職が決まったのが、丁度1年ぐらい前になります。
一年たつのは早いものですが、もはや助教時代にどんな生活をしていたのか思い出せないぐらい今は充実しています。

こんなことなら早く転職しておけばよかった・・・と言いたい所ですが、やはり助教時代に過ごした時間があったからこそ、今があると思っています。

僕の現在の職種は、研究内容がそのまま仕事内容になっているぐらい自分の専門分野とマッチしていました。

こう聞くと、

「たまたま運よくマッチングした会社があっただけだ」
とか、
「お前の分野がたまたま実用的だっただけだ」
とか、
「なんだかんだ言って雇ってもらえるぐらいの業績があったんだろ」
とか、色々言われるでしょう。

ある意味、全て事実なのかもしれません。

でも、僕自身は運とか、たまたまだったとか、そうは思わないのです。

民間企業を受ける前は、ずっとアカデミック分野への応募を続けてきました。
でも、アカデミック分野は全滅でした。
中には分野違いの所もありましたが、大抵は自分の専門分野への応募でした。

多分、落ちた理由は、業績が不十分だったからでしょう。
でも、これまでの記事で書いてきたように、僕よりも業績が少ないのにアカデミックの職についている人はたくさんいます。報告書に一報も論文が無くても科研費をとり続けている研究者もいます。

一方で、素晴らしい業績を持っているのにも関わらず、いつまでも任期付きの職を渡り歩いている研究者もいます。

所詮は負け惜しみですが、アカデミックポストなんてそんなものだと思います。

そう考えると、むしろアカデミックポストの方が実力じゃなくて運で、たまたまプロジェクトが続いている研究機関のポスドクになって、業績が無くても科研費をもらい続けている人がいる。たまたま急に前任者助教が辞めたところに急きょ入り込めた人がいる。などなど。。。

それに比べると、僕は今の会社にはちゃんと実力を買われて雇われたんじゃないかなと、そう思うわけです。

アカデミックポストの場合は職について研究をせず論文を書かなかったり、お手伝い程度のことしかしなくても、別に誰も損しません(税金等が無駄使いされるという損はありますが・・・)。

でも、企業はちゃんと働かない人を雇ってしまったら、その分が赤字です。
企業の赤字は、そのままダイレクトに他の社員の給料に響くわけで、怠けている人がいると、頑張っている人が確実に足を引っ張られるわけです。

なので適当に人を雇うわけにはいきません。

僕はそういう意味では、会社に十分貢献していると自負できます。

そんな僕の目から見て、博士課程の学生やポスドクは、やはりアカデミックポストだけではなく、民間への就職や転職を是非考えるべきだと思います。

民間へ転職すると自分のやりたい研究ができない、と思われるかもしれませんが、そうなってしまうのは単純に努力不足だったり、そもそもやる価値のない研究だからではないでしょうか?

そう言うと、大学の研究は役に立つ必要はない、と言われるかもしれません。

もちろんその通りだと思います。
ですが、そういう人に限って、まず間違いなく全く論文を書かないと思います。
論文を書く時は、その論文の研究がどのように重要なのかを説明しなければなりませんから。
何の役にも立たず、既往研究のパクリみたいな研究しかできないのなら、まあ企業に入っても自分のやりたい研究なんて絶対にさせてもらえませんから。

というか、そもそも企業に入っても自分のやりたい研究をやっていけるような人は民間に転職などしないのかもしれません。

一方で、民間企業では柔軟性が問われます。
自分の専門外の仕事でも、調査し計画を立て実行する力が問われます。
そして、そのために、社員を教育し、社員は常に勉強し続けています。
博士課程の学生やポスドクは、そういった教育が無くても自分の力でどんな仕事でもやっていけるような能力を問われるのです。

結局、博士課程卒の学生やポスドクは、自分の興味のある研究だけやっていたのでは生き残っていけない世の中になってきていると思うのです。

自分は、自分の専門分野でない仕事でも、しっかりとこなすことができると、アピールできなければなりません。

ただ単に目の前の研究だけを行うのではなく、他分野へ応用したり、他分野の技術を使って自分の研究を発展させたりと、常に視野を広く持って研究を行うべきです。

僕は現在の仕事柄、大学の研究者や博士課程の学生と接することがあります。
彼らは、非常に視野が狭く、自分の専門分野外のことは自分の研究とは関係ないと思っている人が多いです。しかも自分が理解できない専門分野の研究を下に見る傾向すらあるのです。
また、自分でちょっと勉強すれば済むようなことでも、自分の専門分野外だと自分で調べようとせず、学部の授業で習うような教科書に書いていあるようなことも平気で放置します。

民間企業ではそのようなことは許されません。

僕はアカデミック出身の立場なので、このように頭が固く柔軟性のない研究者を見ると悲しくなってしまいます。このような人がいるから、博士課程の学生やポスドクは使いにくいと思われてしまい、柔軟性がある人も同じくくりにされてしまって転職できないのですから。





posted by ノルマン at 00:02| Comment(2) | ポスドク・オーバードクター問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月28日

任期付き助教の転職〜アカデミックの世界で生き抜くには

アカデミックの世界を諦めて民間企業に転職した身ですが、失敗したからこそ見えてくることもあるので、アカデミックの世界で生き抜くために、どうしたらいいのか考えてみました。

まず、ここでは「論文をたくさん書く」とか「業績をたくさん残す」とか「レベルの高い研究をする」とか、当たり前のことにはあまり触れません。

というか、世の中、「論文をたくさん書く」とか「業績をたくさん残す」とか「レベルの高い研究をする」とかの条件を満たしていても、ポスドクや助教などの任期付きポストを転々としている人がたくさんいるし、これらの条件を全く満たしていないにもかかわらず、パーマネント職についている人もいるからです。

つまり、パーマネント職に就くための基準が曖昧なのです。

将来の不安を抱えながら必死で研究して業績を伸ばしても、決して安心感を得ることはできません。

例えばこの記事で書いたように、僕のいた研究室の前助手は地方国立大の准教授になったのですが、研究分野の人が内容を分からないことをいいことに間違った理論で論文を重投稿して量産して業績を増やしていました。

その准教授は、今ではその研究をやめて、また分野の人が理解できないことをいいことに、他人の考えた解析手法を使って研究を行っています(つまりオリジナリティはゼロ)。

まず、その人から学ぶことを一つ。

@自分の専門分野を、その知識が乏しい他分野に応用して論文を量産して、その分野のパーマネントを得る

です。

例えば僕の場合は物理シミュレーションが専門だったのですが、それをその知識が全くない他の実験分野に応用して、それなりに見栄えのいい結果を出して論文をたくさん書けば、スゴく重宝されると言うわけです。

しかも、シミュレーションは初期条件や解釈の仕方によっては色々な結果を導き出せるので、実験家に対して都合のいい結果を提供することができます。

実際、その准教授は、知識のある人から見たら滅茶苦茶な手法と結論で論文を量産していましたが、かなりウケが良かったです。

汚いやり方ですが、一つの方法であることは確かです。

しかも、パーマネントの職を得てしまえば、自分の専門分野に復帰しても良いわけです。

ただ、僕はやはりそういう汚いやり方はどうしてもできません。
特に、その准教授のように間違った理論で論文を重投稿するなど、研究者としてやってはいけないことだし、研究者たるもの、自分の研究を分からない人にも分かりやすく伝えて利用してもらう義務があると思うからです。

その准教授は間違った方法論を説明する時、かなり曖昧に濁していました。

うちの教授は生涯ファースト論文数が10未満というゴミ研究者で、大学助手をやめて民間企業に転職するもクビになって転々とし、最終的にはコネで大学に入り込んだ、劣悪教授です。

そんな教授にすら、その准教授は研究を小馬鹿にされていました。

つまり、どんなに研究の質が低くても、やり方によってはパーマネントの職を得ることができるのです。

ただ、この方法はポスドクな方は実行できないと思います。
助教で且つ、ボスの教授が無能でなければできません。

ただ私立大学の任期付き助教の場合、研究よりも、講義とか卒研指導のために募集されることが多いので、ボスの教授は割と無能な場合が多いです。

その場合、結構自由に研究させてもらえるので、その場合のみ使える手法と言えます。


でも、やはり上記のような方法ではなくて、ちゃんと研究者として信頼を失わない方法でアカデミックポストを得る方が、(傲慢ではなくて)自信を持って自分の研究をアピールできると思います。

それには、やはり「ちゃんとした研究者がいて研究活動をしている大学研究室、研究機関」に所属する以外ないのではないでしょうか?

ポスドクの場合は、そもそもしっかりした研究を行っている機関でないと雇うことすらしないと思うので、余り問題はないのかもしれませんが、中には教授が全く研究していなかったり論文を全く書いていなかったりする所もあるかもしれないので、注意が必要です。

問題は大学助教の場合です。

大学助教は、基本的に研究をするために雇われるのではなくて、大学の業務を行うために雇われます。
つまり、講義や卒研指導、そのた雑用です。

その場合、研究室の教授の能力は関係ないのです。

つまり、僕の場合のように、生涯ファースト論文数が僕よりも少なく、それこそコネで教授になり、かつ研究も教育も全くしていない教授も、助教は雇えるわけです。

しかも、そういう助教にも任期があるのが当たり前です。

この場合、はっきり言えば、消耗品として使われるだけです。

研究費用も、助教は自分で大学に申請できないことが多く、教授を介して申請するため、下手をすると研究に必要な物品も買えなかったり、学会参加の補助さえ出ない場合もあります。

もちろん科研費を取っていれば問題ありません。

大学助教になる場合、科研費が取れないと話しにならない場合があるので、十分注意してください。

でも、ちゃんとした研究室なら問題ないはずです。

現在、大学ポストは任期付きでも得ることは困難で、ほとんどの人が数打ちゃ当たれで申請していると思います。

ただ、そのやり方だと、所属した研究機関によってはマイナスに働き、自腹を切ってでもちゃんとした研究機関についた方がマシだったりすることもあります。

後は、やはり学生の時から研究室選びに慎重になることぐらいでしょうか?

とにかく実力以外の部分に作用される世界なのが、アカデミックの世界です。

僕が思うに、ポスドクや任期付き助教等のポスト、非常勤の講師などの中には、環境さえしっかりしていれば、十分にその能力を発揮できる人がたくさんいると思います。

その環境を自分の力で作ることが、アカデミックの世界で生き残るための方法なのではないかと思います。

ポスドクだったら、所属機関や機関長を慎重に選ぶこと。

大学助教だったら、科研費の確保や、やはり研究室選びに慎重になること。

それさえしっかりできていれば、安心して自分の道を進んで大丈夫だと思います。

それでも、前出の准教授のように、汚いやり方を使ってくる人がいる世界なので、やはり厳しいですね。。。
posted by ノルマン at 15:22| Comment(2) | ポスドク・オーバードクター問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

任期付き助教の転職〜任期助教の転職後

2013年2月に地方私大の任期付き助教から民間の研究職に転職し、2ヶ月がたちました。

結果から言いますと、本当に充実しています。
充実している理由はいくつかありますが、以下の理由があります。

@会社や社会に貢献できている実感が持てる

A人間関係が広がった。

B社員同士の仕事のフォローやサポート体制がしっかりしている

C上司や同僚とのコミュニケーションがしっかりしている

などです。

まあ、上記は人間社会で生きていれば当然と言えば当然の環境だと思います。

でも、アカデミックの世界では、この当然の環境が全く機能していないことが多いのです。
アカデミックの世界で生きている人なら分かっていただけるのではないでしょうか?

まず、「@会社や社会に貢献できている実感が持てる」ですが、民間企業なので自分のしている仕事が直接会社の運営や社会に直結しています。

自分で開発した技術はそのまま会社の技術として利用されます。

顧客から受注した依頼を解析すれば、当然その分のお金をいただき収益を得るわけです。

また、うちの会社の場合は、仕事さえしっかり行っていれば個人で技術開発を行って貢献することもできます。

大学等のアカデミックの世界では、どんなに研究しようが論文を書こうが、誰も得をしません。
科研費が当たっても、それは自分の収入でもなければ大学の収入にもなりません。
もちろん、科研費が当たっても、基本的に給料は上がりません。

「自分の研究成果や論文が、具体的に技術開発に利用されたり製品化されたりするかもしれない」と言う人もいるかもしれません。

でも、それは「かもしれない」止まりです。実感することはほとんどないです。

あと、ぶっちゃけ大学の研究も既に行われている研究の真似だったりすることがほとんどです。
文献調査して、「あっ、この文献の方法は、あまり利用されてないけど面白そうだ。これ使って研究すれば面白い論文が書けるかも」って研究者がほとんどです。

一方、民間企業は独自に技術を開発した場合、その技術や方法論が正しいのかどうか実証しなければなりません。もちろん論文化して世に認められなければなりません。

なので、やはり民間企業でも、既に論文化されていて方法論が確立されている方法を技術化した方が検証をしなくていいので、その分、早く商品化できるわけです。

これって、大学の研究と変わらなくないですか?

それ以外に、独自の技術開発も行わせてもらえるわけですから、自分にとっては大学よりも、今の方が研究のし甲斐を感じています。

次に「A人間関係が広がった」です。

企業なので、毎日他の社員さんと顔を合わせるし、会議も定期的にあるので、意見交換も盛んです。

うちの課では、よくみんなでランチに出かけます。
別に仕事の打ち合わせとかではなく、強制でもありません。

その時、雑談したり、仕事の話しをしたりするのですが、実はこのランチの時間が非常に重要でした。
転職して間もない頃は、会社のことはまだよく分かっていないし、業務中に色々質問したりも難しかったりすることもありますが、ランチの時に気軽に上司や同僚に質問することができるからです。

もちろん、会社の状況とかもみんなの会話から把握することが出るし、人間関係を深める役割もあります。

一方で大学では、ほとんどの時間を一人で過ごします。

もちろん研究室によっては、スタッフや学生みんなで学食に行ったりすることもあるかもしれませんが、僕の場合は学生と食事をすることはよくありましたが、他の助教さんや教授と一緒に食事をすることはありませんでした。

大学だと、他の教員とはほとんど絡まないのが普通なんじゃないでしょうか?

お互い研究分野が違うし、なによりポスドクや任期付き助教とかだと肩身の狭い思いをしている人が多いので、あまり他の教員と関わりたくないと言う気持ちになりがちです。

僕の場合は教授が変わった人だったので尚更でした。

任期付き助教を7年していましたが、結局今でも付き合いがあるような先生は一人もいません。
むしろ卒業した学生からたまに飲みに誘われたり、年賀状が来たりします。

次に、「B社員同士の仕事のフォローやサポート体制がしっかりしている」と「C上司や同僚とのコミュニケーションがしっかりしている」です。

「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」がちゃんと機能していて、上司や同僚と業務に関するディスカッションを気軽に行えます。強制ではありません。自分が何か行き詰っていたり疑問に感じたことを相談できます。

これは民間企業なら当然です。社員の行ってる仕事がうまくいかなくなったら、それはそのまま会社の収益につながってしまうし、その先にはお客さんがいて、仕様書や納期もあります。しっかり社員同士フォローし合わないと仕事が失敗して損失が出てしまいます。

一方で、大学では基本的に研究が失敗しても誰も損はしません。お金の損失もありません。
科研費も大学の研究費も、研究が成功しようが失敗しようが支払われるし、給料も下がったり上がったりすることもありません。

大学では研究が失敗しても「自己責任」とか「お前がそもそも無能だから」とか「それだけ厳しい世界だから」の一言で片づけられてしまいます。

もちろん、誰も相談に乗ってくれません。

助教やポスドクの時点で「一人前の研究者」なので、相談なんて必要ないわけです。
教授が有能で、ポスドクや助教と研究のディスカッションを行ってくれる研究室なら別ですが、そうでない研究室の方が多いのではないでしょうか?

また学会発表等を行った所で、そんなのは年に1、2回だし、深い議論も行われないし、そもそも学会発表は成果を発表する場(つまり業績)で、誰かに相談したりする場ではありません。

そういった意味でも、企業では安心して仕事を行うことができます。


こんなわけで、アカデミックの世界から民間に転職したからと言って、すぐに即戦力として何から何まで自分一人でしなければならないかと言うと、そういうわけでもありませんでした。

もちろん、経験を問われるので基本的なところは分かっているものとして業務を与えられます。
でも、その辺は博士号をとった研究者なら誰でも当たり前に対処できる能力はあるわけで、問題ないはずです。

現在アカデミックから転職を考えている人で、アカデミックの世界に息苦しさを感じていたら、是非、民間への転職も視野に入れてほしいです。

もちろん、民間会社は倒産とかリストラとかの不安があるかもしれません。

でも、アカデミックの職の多くが任期付きなわけだし、どんなに頑張って研究しても次の職が得られる保証もないわけです。

それと、現実問題として「アカデミック職は社会経験が無い」とみなされている現実があります。
その業界では有能で有名人、みたいな研究者なら問題ないでしょうけど、そういう人はそもそも民間企業に転職なんてしません。せいぜい退官してから顧問とか技師として企業に貢献するぐらいです。

僕は35歳で転職を考えました。おそらくギリギリの年齢だと思います。

でも、僕の職場には40過ぎてからアカデミックから転職したという人もいます。課長以上の人とかはほとんど中途です。

こんなわけで、かなり充実した社会人ライフを行っている今日この頃でした笑
posted by ノルマン at 13:16| Comment(2) | 転職後 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。