2012年12月26日

任期付き助教の転職〜ポスドク・オーバードクター問題

僕は任期付きの私大助教から民間企業(研究開発)へ転職しました。

いわゆるオーバードクター問題とかポスドク問題、高学歴ワーキングプア問題といった問題の対象になるべき人間です。

なので偉そうなことは言えません。

結論から言えば、これは博士課程進学者やポスドク、任期付きポスト(助教や講師など)の人達の自己責任であることは否定しません。

僕も、自分が任期無しのアカデミックポストにつけなかったのは自分の責任だと思い、こうして民間に転職を決めたのですから。

ただ、僕の場合はもうだいぶ前からこの世界でやっていくのが嫌になっていたので、こうやって多少なりにも自分の研究テーマに関連した業務内容の民間企業に転職出来たのは、そのままアカデミックの世界にとどまるよりも、ある意味成功だったのかもしれません。

それでも、僕は当事者の一人としてこの問題に言及せずにはいられないのです。

それは、

@たいして研究能力が無くても博士の学位をあげてしまう研究室が多い
Aたいして業績も無い修士や博士の学生が、研究室のボスの力で学振DC、PDに当たってしまうことがある
Bたいして業績が無いのにコネで任期付きポストやポスドクになれてしまうことがある
C能力もコネも無くてもポスドク募集が乱立しているので数打ちゃ当たるで応募すればどこかに拾ってもらえることがある
Dたいして研究業績が無くても研究室のボスの力やプロジェクト参加により科研費が取れてしまうことがある
E任期付きポストやポスドクでありながら非常に高額な給料が支払われている

などです。

このうちDに関しては、科研費をバンバン取っている研究室に博士課程から移籍すればPDも当たるし、卒業後も科研費をとりやすかったり、科研費採択期間中に一本も論文を書かなくても次期プロジェクトが立ち上がれば自動的に次のプロジェクトにも参加できることもあります。

また現在はあまり行われていませんが、研究室の博士課程の学生を助手にしたり、他大学の助手に着任させて、博士の学位を時間をかけて習得させるようなこともあります。

これらの問題点は、本人が「自分には実力がある」とか「今は任期付きだけど科研費も取っているし、それなりのポストにも就いているから何とかなる」とか「将来のポストもボスが何とかしてくれる」と思ってしまう所です。

また、給料も高額であることが多いことが当然のように思ってしまうのも問題です。
基本的に研究者は裁量労働制であるため、中には休日も研究、平日も夜遅くまで研究している人もいらっしゃると思います。
それでも、上記の@〜Dのような研究者が高額の給料をもらうのはどう考えてもおかしい。
裁量労働制にするなら、なんかしらの貢献度でもって減給/昇給するべきなのにそれが無い。
ようは一度ポストについてしまえばどんなに研究への貢献度が少なくても高額の給料が支払われるわけです。

もちろん中にはポスドクや任期付きポストでありながら立派な業績(質の高い研究、IFの高い論文投稿など)を積み続ける人もいます。

ただ、自分の知っている限りでは、そのように立派な業績を残している人でも何年もポスドクをしている方が非常に多いです。

つまり、しっかりと一人ひとりの研究能力を評価するシステムが無く、安易に学位やポスト、科研費を与えてしまう。科研費など採択後に年度ごとに成果報告書を提出するのだが、発表論文がゼロでも全くお咎めが無いし、論文内容について質を評価することもない。例えば所属機関で作っている紀要論文でOKだったりする。それなのに次年度の科研費が連続して当たったりする。

本当に不透明な世界なのだ。

色々とダラダラ書いてしまったが、結局何を言いたいのかと言うと、

「研究能力の低い人が自分は大丈夫だと勘違いしやすい」と言うことです。

もちろん、研究者が自分を客観的に評価できれば問題ありません。
「たいして論文も書いていないのに科研費が当たった。これはボスのおかげで自分の実力じゃない」とか「自分はボスのコネで今のポストにつけたけど、それは自分に業績があったからじゃない」とか、しっかり認識できていれば問題ない。

そういう意識があれば、ある程度の年齢(例えば35歳転職限界説)までに転職するなりして次の道を探す準備を早めに始められるはずなのだ。

ただ、昨今のポスドク問題、オーバードクター問題、高学歴ワーキングプア問題は、安易に研究者の道を与えられた研究者たちの勘違いによるところが大きいと思うのだ。

僕はアカデミックポストの任期制には大賛成です。

でも、任期制をこれからどんどん進めて行くのであれば、研究評価等の土台作りをしっかりしてからにするべきだったのではないかと思ってしまうのです。

現在、博士課程の学生さんやポスドク、任期付きのポストの方でこの駄文を最後まで呼んで下さった方へ。

「俺はお前のような底辺とは違う。実力主義なのは重々承知だ」と思っている人も多いと思います。

そんな人には是非、次のポスドクメモを読んで、もう一度自分を見つめ直してほしいです。
こんな僕でも、かつてはあなた方と同じように考えていたのですから。。。

大阪大学大学院理学研究科小川哲生研究室HPより
ポスドクへのメモ

また博士課程の学生、および博士課程に進学予定の学生には合わせて次のアドミッションポリシーも読んでほしいです。

小川研究室のアドミッションポリシー

ちなみに僕は小川先生とは全く面識もなければ研究分野も全く違います。
関係者の方々に何の了承も得ずに記事の紹介をしてしまい、大変恐縮です。

ですが、是非色々な人に読んでほしいと思います。





posted by ノルマン at 22:46| Comment(2) | ポスドク・オーバードクター問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一般の人がこの記事を読むと、任期付き研究員やポスドクの給与が高額であるかのような誤解を生じると感じたので、コメントいたします。

私は数理物理分野で長年ポスドクをしていますが、これまでの月給は30万円前後、もちろん賞与なし、都市手当てなし、福利厚生なし、です。http://jrecin.jst.go.jp でポスドクの求人を見ても、月給換算で26万円〜33万円の公募が多いのが明らかです。また、知り合いには塾講師をしながら客員研究員として研究を続けている人や、ポスドクでももっとずっと給与の低い人(違法にならないように、勤務時間が短い扱いになっている)もいます。一方で給与の非常に高い人もわずかですが知っています。要するに、ポスドク間にも大きな給与格差があります。そしてそれは実力とはあまり相関がないように思えます。

ところで、論文を一月に一本書け、というような極端な主張へリンクが張られていますが、これは真に受けない方が良いかと存じます。物性物理では、短編を多く書く人ならば、年に4本以上書くこともあるでしょうが、年に6本以上となると、共著者が多い人か、ほんの一握りの極めて優秀な人、かつ論文量産に適した題材に恵まれた場合に限られます。また、統計学ではフルペーパーの場合、査読に1年以上かかるのが珍しくありませんし、理論計算機科学や整数論、微分幾何などでは題材によっては3年以上かかることもあります。一方で、有機化学や材料科学では、題材によっては非常にページ数の少ない、測定結果だけが載ったような論文を大量に出版する傾向があります。要するに、分野や題材によって妥当な論文数はまちまちです。

なお、学振DC/PDや科研費の審査が納得できない、というのはまったく同意見です。また、業績が少ないのにパーマネントを取る人がいる一方で、素晴らしい業績があるのにずっとポスドクから抜け出せない人がいる、というのも本当にその通りです。私も、旧帝国大学ですら公募もせずに教授の知り合いや教え子を助教に採用するという例を何度も見ていまして、そんな状況では研究をやる気もなくなってきます。国立大学には率先して公平性の担保に取り組んでもらいたいものです。

Posted by ten-years_postdoc at 2013年04月28日 22:10
アカデミックに残れずに不本意な就職をしたものです。学位は取りましたが、仕事は研究分野とは直接関係がないです。
それはともかく、職業としての学問という本では、昔から大学教員の人事(ヨーロッパの大学)は公平ではなかったようです。いわんや日本ではですね。
Posted by もと博士課程学生 at 2013年06月11日 00:51
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