2012年12月22日

ポスドクや任期付き助教の転職について

前回の記事では少し下品なことを書いてしまいましたが、そういうことも包み隠さず書いて行きますよ笑

さて、今回は実際に僕が行った転職活動について少し具体的に書きたいと思います。

ポスドクや任期付き助教が転職する際、大抵の人は転職サイトを参考にすると思います。

博士・研究者向けの求人サイト(例えばJREC-INなど)はもちろん、一般職の転職サイトも参考にするかもしれません。

他には転職エージェントといって、転職希望者の希望や職歴にマッチした企業を見つけてきてくれて、直接先方の人事に掛け合い採用の可能性を探ってくれる業者がいます。

書類の書き方や面接の仕方などもアドバイスしてくれるそうです。

しかも成果報酬型なので、転職が成功した時に報酬を支払うシステムなのだとか。
実際にそれを利用して民間に転職できた人も多いそうです。

僕もアカデミックポストはJREC-IN等の研究職用の求人サイトで、自分の研究分野とマッチしている職へは全部応募しました。

結果は自己紹介で書いたように書類選考で全滅です笑

JREC-INなどで紹介されているポストは、相当倍率が高いらしいです。
特に任期無しの常勤ポストは相当倍率が高いとか。

例えば、うちの大学は私立大学ですが、教授の話によると准教授の公募に100名以上の応募があったそうです。
そして、その応募者の業績数はどれも甲乙つけがたいぐらい素晴らしいのだとか。

任期付き助教の募集でも、同じぐらいの数が来るそうです。

教授が言うには、そうやってたくさんの応募があると業績数で絞り込むしかないのだとか。
「あなたの業績数では、よっぽど巡り合わせが良くないと難しいだろうね」
と教授にも言われたし、自分でも無理だと思っていました。

ちなみに、自分が博士卒業後すぐに今の任期付き助手/助教に着任できたのは、ぶっちゃけコネでした。

つまり、たくさんの業績数があるかコネでもない限り、アカデミックポストを得ることは難しいと思います。
他には企業から転身してくるような変わり種(?)とか。

しかも、一つのポストに100名ぐらい応募があって、みんな業績数に大差がない、となるとコネなしのガチ公募だとしても最終的には業績数で切られてしまう可能性が非常に高いわけです。

そう考えると、質の高い研究はしているけど、業績数の少ない人はどうすることもできないわけです。

やれることは、日頃から自分の分野の研究者と交流して顔を覚えてもらうなど、研究以外にコネ作りを積極的に行うぐらいでしょうか?

では、具体的にはどんな人が公募に通って任期無しの職についているのか?
僕の身近で任期無しのポストに就いた3人の場合を例にあげます。
ただし、この3人は特殊な例だと思ってください。

@現ラボの前助手⇒地方国立大准教授へ

A前ラボの先輩ドクター⇒私大学振PD⇒独法ポスドク

B前ラボ先輩ドクター⇒同ラボ助手⇒同ラボ准教授

の3人です。@、Bは確実に任期無し、Aはおそらくパーマネントポスドクだと思いますが、定かではありません。

ただ、3人とも世間から見たら立派な業績、研究を行っているとは言えないと思います。

まず、@ですが、この人は僕が出会ってきた人の中では群を抜いて悪質な人でした。
@の業績は確かにたくさんあります。年間10報近く論文を書いていたと思います。
ただ、その論文の殆どが重投稿なのです。重投稿は同じ研究内容、同じデータで複数の雑誌に投稿することです。研究者としては決してしてはいけない業績の稼ぎ方です。

また、僕はその研究の手法を用いて研究を行わせていただいたり、そのデータ使って卒研指導などさせていただいたのですが・・・おいおい、理論がめちゃくちゃじゃねーか笑

その人が用いたデータ解析手法は現ラボの研究分野では理解できる人がほとんどいないため、誰も再現性などチェックしていません。

また、その人が作った解析用のプログラムはデータを入れ変えると全く別の結果が出たり、入力データの前処理の仕方で全く別の結果が出たりと、最低な代物でした。

また、卒業研究用のデータを使って、その人が投稿した論文のデータの追実験・解析を行ったのですが、全然再現できねー笑

教授に聞いてみたところ、「僕の正直あまり信用してないんだよ。だって@が解析しないとちゃんとした結果が出ないし、他の手法との比較データもないし。でも@はホントうまくやったよね。」だそうです。。。

おいおい・・・・。

例えば、@の研究は解析に用いた手法を専門に研究している分野の論文に投稿したら確実にリジェクトされたと思います。なじみのない現ラボの分野に応用し、誰もチェックできないことをいいことに重投稿で論文を量産したわけです。しかも、論文のほとんどはプロシーディングス(国際学会の特別号。査読も甘くアクセプトされやすい)です。

@から学べることは、汚い手を使ってでも論文を量産すればその業績数だけで数打ちゃ当たるで通ることもあると言うことです。

続いてAですが、この人はドクター時代の業績数を買われて私大の学振PDとなりました。
ただ学振PD時代に書いた論文数は一報です。

その後、独法の任期付きポスドクになりましたが、その経緯って一体何だったのでしょうね。
まあ、学生時代の論文数がモノを言ったのかもしれませんが、僕の想像ではPD時のラボの教授のお世話があったんじゃないかと思っています。相当この分野では力を持った教授でしたので、任期付きポストを世話するぐらいわけないと思います。だって、PD時に書いた論文が一報だけですよ。しかもそれほどインパクトファクターも高くない平凡誌です。

そして現在、別の独法の研究員となって科研費をとっていますが、ポスドク時に書いた論文はたったの一報です。独法のポスドクの上司の方が推進しているプロジェクトの一員として働いているので、業績数が少ないことを考えると、その科研費もただの政治力でしかありません。

論文も全く書かず、ただのうのうと言われた作業だけをやっているだけのポスドクです。
おそらく年収は800万近くもらっていると思います。我々の血税です。

そして最後はB。
この人はドクター取得後、すぐに同じラボの助手になりましたが、その時点で論文数は3報。まあ普通です。
助手になれたのは前ラボの教授(僕の指導教官)が引っ張り上げたのが理由です。もちろん公募ではBよりはるかに優秀で業績数のある業界でも有名な研究者が名を連ねていました。今では皆さんポスドクや任期付きポストを渡り歩いて任期無しのポストに就いていらっしゃいますが、Bのように運のいい人も普通にたくさんいることでしょう。

その後、そのまま准教授になりましたが、論文数はファーストで10報も書いていません。
もちろん、どれもインパクトファクターの高い雑誌ではなく平凡誌です。

完全に運と地方国立大のぬるま湯体制が生み出した研究者と言えるでしょう。

そして、こんな研究者なのに科研費も当たっており、当たって2年目なのに論文は一報も書いていません。
科研費が当たった理由はそのラボの教授(僕が在籍中は助教授だった)の力だと思います。
その先生は科研費はバンバン通っていたので同じラボということで評価されただけにすぎないと思います。

いかがでしょうか?
いずれも任期無しのポストをゲットした僕の身近な方々ですが、研究者として決して有能なわけでもなければ業績数も多いわけでもありません。

もちろん僕も含めて。

これから言えることは、自分より優秀で業績数のある人がたくさんいても、公募に通る理由はタイミングとか運とかコネの要素も非常に大きいということです。

そう考えると、任期無しポストは無理でも任期付きの職だったら数打ちゃ当たるで応募すればどこかに引っかかるんじゃないでしょうか?

と話しがまたまた脱線してしまいました笑

とまあ、こんな感じで、一生懸命頑張って業績を稼ごうが、レベルの高い研究を行おうと努力しようが、必ず報われるわけではないし、かといって@のように手段を選ばず汚い手で業績を稼ぐ気持ちにもなれませんでした。

残すは民間への転職でしたが、やはり今の研究に関連した分野で働きたいという希望は譲れませんでした。

今まで好きなことを仕事にしてきたわけだし、だから色々あっても頑張ってこられた。
それが全く興味もなければ関連もしないような分野に進んで、研究は趣味で行う、なんてことはできませんでした。

そこで、自分の研究分野で学会発表をしている企業を国内の学会発表の要旨からピックアップし、直接電話で採用担当に電話して中途採用が無いかどうか確認してみました。

でも、どれも大手の企業だったし、その部門での中途採用は行っていないとの回答ばかりでした。

仕方がないので、今までの研究で身につけたスキルが活かせる別分野の企業で中途採用を随時行っているところに応募してみました。

すると、「ご専門の研究分野と業務内容がマッチしていない」と書類選考も通ることができませんでした。

僕はコネに頼るのはもう嫌でした。
別記事で書ければと思っていますが、僕を雇ってくれた現ラボの教授は全く研究もしなければ論文も書かないし、学生卒研指導ですらまともにやらないような人で、助手を募集したのは雑用をさせるためでした。

そんな研究者として無能な教授でも、コネで雇ってもらった手前、毅然とした態度で接することができず、随分と理不尽な態度をとられたものです。

もちろん研究には興味が無いので、僕の研究なんてはなから理解する気はありません。
彼にとってみれば僕の研究テーマは卒研テーマのネタでしかないのです。
(前助手が出て行きたくなった理由も分かります笑)

コネで採用されると言うのは、それだけで信頼を失っているのです。
もし僕がコネで民間に就職したら、「こいつはコネ入社だ」とウケもよくなく、結局入社後の人間関係に悪影響を与えると思いました。

なので、何が何でも自力で探すと、もう誰にも甘えないと決意しました。

結局、ネットでたまたまとある企業の社外用報告書のようなpdfファイルを見つけ、その報告内容を見ると自分の研究分野に近いことがわかりました。

早速その企業のHPをみると、業務内容や社外セミナーなどの詳細が載っていて、ここなら自分の研究分野と良くマッチしている、行けるかもしれない、と思いすぐに採用担当に電話しました。

「中途でも雇ってもらえるかどうか?自分は大学の助教なのだがそれでも転職が大丈夫かどうか?学会やセミナーなどで今まで全く接点がないのだがそれでも大丈夫か?」

と、ど緊張して声も震えていたと思います。しどろもどろになりながら質問したと思います。

すると、「とりあえず、履歴書、職務経歴書、それと業績書があれば送ってください」と言われました。

僕はすぐにその企業の業務内容をHPとネットでできる限り調べ、それに合わせた志望動機等を作成し書類を2日ぐらいかけてじっくりと作成しました。

不思議と作成しているのが楽しくて仕方がありませんでした。

志望動機は簡潔に、かつ自分の熱意が伝わるように書きました。
ただ、自己アピールややりたいことを書くよりも、企業の業務内容の考え方、取り組み方などにたいして、非常に共感したこと、そして自分が仕事を通じて得て来た研究や教育への理念などを動機蘭に書きました。アレコレができるとかやりたいとかではなくて、自分の熱意を伝えようと努力しました。

職務経歴書もただ経歴を書くだけではなくて、今の仕事を通じて学べたことなども書き、決してアカデミックの世界を諦めて適当に就職しようと考えているわけではなくて、あくまでも職場が変わるだけで、自分が研究への熱意を失ったわけではないことが伝わるように工夫しました。

結果、応募書類が届くとすぐに面接の連絡があり、すぐに採用が決定した次第です。(詳しくは自己紹介参照)

ある意味、僕も@〜Bの人達のように、業績数とか研究の質とかそういう部分で評価されたわけではないのかもしれません。

業績数があり、質の高い研究を行っている人から見たら、「何だよ、結局運かよ」と言われるようなタイプなのかもしれません。

ただ、それでも伝えたいのは、コネとか業績数とかインパクトファクターとか出来レースとか、そういう評価が曖昧なアカデミックポストの公募よりは、企業のほうがフェアに評価してくれたような気がします。

転職を考えているポスドクや任期付き助教に方々は企業の面接に対して不安もあると思います。

僕も、もしかしたら面接で、なんでアカデミックポストを諦めたんだ、とか、業績が少ないけど何やってたんだ、とか、適当に就職したいだけなんじゃないの?とか、そういうことを言われるんじゃないか、と不安でした。

でも、僕のように大した業績で無くてもしっかりと話しを聞いてくれる企業はちゃんとあるはずです。

企業だって人材が必要だから採用を募集しているのです。
アカデミックポストのように、空きができたから募集する、と言うのとはわけが違います。

むしろ、企業の募集の方がアカデミックポストよりもあなたを必要としてくれるかもしれませんよ。






posted by ノルマン at 14:31| Comment(0) | ポスドク・任期付き助教の転職 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ポスドクや任期付き助教が転職できない理由を考える

ポスドクや任期付き助教が任期が切れる、もしくはアカデミックの世界を離れたい等の理由で民間へ転職する際、一般的には転職が難しい率の方が高いように思います。

その理由については色々な意見が出ているけど、多分大体次のような理由が多いと思います。

@転職時の年齢が高い場合が多く、見合ったポストを用意しずらいし、給料も最初から高額は支払えない。

A狭い範囲の研究しか経験していないため、よほど業務内容と研究内容がマッチしていない限り雇っても即戦力になりずらいし、一から教育するのであれば新卒(修士卒や博士卒)を雇って教育した方がいい。

ネットなどで「ポスドクの転職」と調べると大体上記のような理由が出てきます

でも、僕はこの@やAは実際のところあまり問題じゃないような気がするのです。

例えば@に関しては、本人が本当に働きたければ新卒と同じポストでもいいし、給料も新卒初任給で構わないはずだからです。

またAに関しても同様で、博士号をとりポスドクや助教などアカデミックの世界で研究してきた能力があれば、また一から企業の業務のノウハウを取得することは可能だと思います。

でも、仮に企業にそのように主張しても、きっと次のような返事が来るのではないでしょうか?

「でも、あなたの能力だったらもっと他に活躍できる場があるんじゃないでしょうか?」
とか、
「あなたのような経歴の方に新卒と同じ境遇で働いてもらうわけにはいきません」
など。。。

もっと厳しいことを言われるかもしれません。
「でも、それだったらもう一度アカデミックの世界をチャレンジしてみたらどうでしょうか?」
とか、
「でも、本当はアカデミックの世界に未練があるんですよね?」
とか。。。

結局企業側の本音を言えば、

Bアカデミックポストを諦めたからうちに入社するのか?そんな気持ちで本当にしっかり働いてもらえるのか?

C本当にやりたい仕事じゃないから、そのうち辞めちゃうんじゃないだろうか?

など、人間性の部分で評価するところが大きいのではないかと思います。

大体、企業が中途採用で求める人材はその企業の業務の経験者でかつリーダーシップのとれる人を求めるのが普通です。

最初からある程度の役職に就くことが前提の場合がほとんどです。

アカデミックのポストだってその辺は変わらないはずです。
任期無しのポストは新たにラボを立ち上げたり、新規のプロジェクトを提案できる人材のはずです。

もう既に研究テーマが決まっている部門のポスドクは大抵任期付きです。
最近多い、特任助教、特任講師、特任准教授など任期付きの大学ポストも同様で、研究者としてではなくて教育者、つまり講義や実験、既に立ちあがっている研究室の補佐(要は雑用)を担当するのがメインの仕事のはずです。(私立大学などでは非常勤でカバーすることが多くなっていますね)。

もし、企業がポスドクや助教を中途で雇う場合、やはり最も重要なのは企業側に「この人と一緒に働きたい!」「この人ならうちで一生懸命働いてくれそうだ!」と思ってもらえるかどうか、要は人間性が重要なのではないかと思うのです。

僕が内定をもらった企業の人事の人と面接後に話しをする機会があったのですが、人事部長の人がこんなことを言っていました。

「うちに就職した人で、辞めて行く人は結構いる。もちろん仕事が大変だと言う理由もあるが、大抵の人は自分のやりたかった仕事と違ってたから辞める人がほとんどだ」と。(これを聞いて「それはその会社がブラックだからだろ」と思ってもらっても結構です。)

でも面接で社長がこんなことを言っていました。
「どんな仕事でもその道のプロになるには一朝一夕ではいかない。5年、10年かかるかもしれない。それはアカデミックの世界でも同じはずだ。それに今の研究者は昔と違って一から研究のための装置を作ったりプログラムを作ったりする経験をほとんどしていない。でも、うちはそれをしっかりできるようになってもらう。そうしないとこの道のスペシャリストを育てられないし、会社がこの世界で生き残っていけない」と。

確かに今の研究者は、何か測定したかったら装置を買えばいい、シミュレーションしたかったらプログラムを買えばいい、というスタイルの人が非常に多いと思います。ある程度完成されたものを使って研究を行っている人がほとんどだし、ましてや任期付きの限られた期間で研究をしなければならないポスドクや任期付き助教に、一から装置を作ったりプログラムを作ったりする時間など無いのです。

それに、学生時代にそのようなトレーニングをちゃんとしてくれる研究室も少ないだろうし、かと言って学生が自発的にそのようなことしても、下手をすると行き詰って学位をとれなくなる危険性もあります。

でも、転職先の企業は一から製品を作る所から始めている。
これを"自分のやりたかったこととは違う"と思うところがアカデミックの世界のぬるいところではないかと僕は思うのです。

人事の人の話しでは僕以外にもたくさんポスドクや博士出身の人が応募してきたそうです。
中には僕よりも素晴らしい業績の人もいただろうし、能力もずっと高い人もいたと思います。
業績や研究能力だけで人選されていたら僕なんて絶対に採用されなかったと思います。

でも、採用されたのは自分を過大評価するわけではありませんが、やはり人間性を見てくれたのかなと笑

つまりは、企業の理念と僕のその企業の業務への姿勢が一致したからこそ採用されたのではないか、そう思っています。

多分辞めて行った人たちは、心のどこかで「俺はこんなことをするためにこれまでポスドクや助教をやってきたんじゃないのに・・・」など企業の業務を見下している所があったのではないでしょうか。

一度自分が企業に採用されて働くことになった場合、どのような心構えで仕事をしていくつもりなのか?、その仕事を通じて自分はどうなりたいのか?、そしてその方向性が会社にとっての利益につながるのか?、よく考えてみるとよいと思います。

ただ、とりあえず正社員になって落ち着きたい、とか、言われた業務だけをこなして給料もらえればそれでいい、とか、そういう気持ちになるのは分かります

でも、それってアカデミックポストに就けなかったこと以上に(ポスドクや助教だった)自分にとって恥ずかしいことだと思いませんか?





posted by ノルマン at 04:11| Comment(1) | ポスドク・任期付き助教の転職 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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